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閻魔の舌 高木 秋尾
閻魔堂の前を歩いていたら
閻魔と目が合ってしまった。
閻魔は莞爾
と声をかけてきた。
割れ鍋のような声だなと思いながら
目を綴じ蓋にした。
どうやら地獄の釜へと
俺を送り出したいようだ。
俺は閻魔の舌がおいしそうだなと思い
いちど食べてみたいものだと
目を開いた。
あみ焼がいいか
ショウガ焼がいいか
それとも
鉄板焼か天麩羅でもいい。
さしみはどうだろう。
生臭そうだから
わさび醤油か生姜おろしにしようか。
とにかくあの舌を齧りたい。
嘘の代償に抜いた舌を
たくさん食べたはずの
あの舌の味を堪能したいのだ。
閻魔はいつ死ぬのだろう。
炊飯器のご飯が
準備は出来たと大声をあげた。
ふりかえると
閻魔の舌がべろんとまな板にあった。
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